少し空いた大通りに入る。
路面の舗装は深めの轍が付いていて、磨かれてテカテカしているのだが、ところどころザラついた舗装の補修で路面のμがコロコロ変わり、段差や、舗装のはがれた穴が開いている。
Iモードのまま、アクセルを踏み込む。5000rpm まではすぐだが、そこまで回す必要性を感じない。
クランクのセンター軸をクランクが公転するような、あくまで柔らく、滑らかな、スバル・ボクサーならではのビートが健在であることはすばらしい。
アクセルを抜いてブレーキを踏み、30km/hまでスピードを落とし、またアクセルを少し深めに踏みなおしても、EJ25 よりリッチなトルクがゆとりを感じさせる。こういう時、0 - 400m 何秒とか、筑波ラップタイム何秒とかといった 「速さ」 よりも、感覚的にリニアリティを得られる反応の 「早さ」 の方が、ドライブしていて、より満足感を得られるものだと気づく。
「いいですねぇ〜、今度の新エンジンは。」 嬉しくて思わず声が上がる。
前回の試乗でも通った道だが、たとえば、速いペースから急激に減速しながら、ちょっと荒くステアリングを切り込んで 「こじって」 みても、リヤのグリップが抜けてしまうような不安感が微塵もないのは前回と同じだが、ステアリング入力に対するソリッド感が一枚も二枚も上がった。
シフトレバーを、ドライバー側のマニュアルポジションに引き寄せて、ステアリングのパドルシフトで6速マニュアルシフトを楽しむ。
何より厚いトルクのおかげで、回転の上がりが素早いのでシフトの楽しみがあるし、とにかく、その制御が緻密で感覚とのタイムラグがなく、変速の際のフィーリングも、スッ・・・スッ・・・と作動を意識させず、ごく滑らかに完了する。
BC5 に乗っていると、トランスミッションを労う意味で、ダブルクラッチ、場合によってはトリプルクラッチを使ってでも・・・と考えるようになるから、私は変速の際のクラッチワークには絶対的に自信がある。
だが、ここまで上手くやることは絶対に不可能だ。
たとえば高速域における危険回避で、クルマの挙動が不安定になったときに、エンジン、ブレーキ制御、そして VDC 、ABS などといったクルマ側のアクティブセイフティのデバイスの中には、もちろん、トランスミッション制御も含まれてくる。
マニュアルトランスミッションのスポーツ車のドライビングは確かに楽しい。でも、そういった万一の際の安全性が担保された上で、トルクコンバーターのスリップによるパワーロスや、テンポ良くワインディングを飛ばしたいたいときのドライバーとの感覚的な 「ズレ」 がここまで少なくなり、逆にステアリングに据え付けられたパドルシフトで、よりクルマとの会話に集中できるようになってくると、マニュアルトランスミッションを選ぶ意味って一体・・・? と、しみじみと考えさせられる。 |
と、ここで、同乗のセールス氏が 「Eyesight のすばらしさを知ってますか?」 というので、「いや、実は知りません」 と正直に答えた。
すみません・・・つい多忙にかまけて・・・。
これは、絶対に知りたい!
スバリストなら、 Eyesight のすばらしさを語れなければ失格だろう。そこで今回、セールス氏のお言葉に甘えて、Eyesight の 真価 を「初体験」 させて頂く事にした。 | |
| 実はこの方、福岡県警はおろか、九州一円の警察本部を回って、この Eyesight の講習を行うほどの、いってみれば Eyesight のプロフェッショナル。
全国各地の警察でも、かなりの数が納入されているそうで、Eyesight 自体、もう警察の一定の 「お墨付き」 をもらっているといってもいいのかも知れない。
もうおなじみのダミーバリア。
ご存知の方も多いだろうが、この支店では、これが全長 40m ほどの お客様駐車場に据え付けられている。 |
40mとはいえ、クルマの速度は、ダミーバリアとその先の木と壁を考えなければ(汗)いくらでも上げられる。
「20km/h くらいまで速度をあげてみましょうか。ブレーキは踏んじゃダメですよ。」
よし分かった。コアサポート修復代その他は払わないからヨロシク。
20km/h なんて、アクセルをつま先で一押しである。いや〜〜〜ん、でもとっても速いのね(汗)。
そりゃそうである。マラソン選手の走る速度とほとんど同じなのだから。 | |
クルマが止まった。無論、しっかりとブレーキを踏んずけている。
もう一度やってみる。ダメだ!どうしてもレガシィの無残な姿が頭をよぎってブレーキを踏んでしまう!
「私がやってみましょう。」
ドライバーチェンジでセールス氏に 「お手本」 を示して頂くことにする。
セールス氏はゆっくりアクセルを ・・・ って、ボクより全然ペースが速いんですけどっ!!!
たちまち近づいてくる インプレッサ スポーツ のお尻。ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!! |
| と、恐怖におののいて硬直している私の体に、「グッ・・・グググッ」と強めの減速Gが掛かった。
レガシィは見事に止まっていた。
壁にも、木にも、ダミーバリアにもぶつからずに、美しい艶を湛えたクリスタルブラック・シリカのボディを初夏の陽光にきらめかせて。
こ、こりゃ スゴイ!!
クルマから降りると、頬を爽やかな風が撫でていった。こういうときに感じる風は、たまらなく爽やかなものである。 |